(記事全文)
|
| |
| “弁慶号”柳井で復活 |
| ・下松工高・ |
下工弁慶号、柳井卸団地で
OB山本さんの熱意実る |
| 日本に一台しかない明治四十年製の蒸気機関車で、動態保存されている国産機関車では最古という下松工業高校 (阿部隆郎校長) のシンボル 「下工弁慶号」 は、昨年の同校七十周年記念式典で雄姿を全校生、父母に見せたが、耐用年数の限界もあって永久保存される予定だった。 しかし同校OBで柳井市の協同組合柳井総合卸センターの山本真太郎専務 (七〇) が熱心に働きかけて”復活″が決まり、三月三日から十一月八日まで、同センターが運営する同市宮本浜の柳井卸団地で運行することになり、レールや車庫の工事が始まった。弁慶号の県内での一般向けの連行は十一年ぶりだけに人気を集めそうだ。 |
| 明治の“動態保存”ただ一台 |
「下工弁慶号」は明治四十年、アメリカのボールドウィン機関車をモデルに東京の石川島造船所で作られた。全長四・〇五b、高さ約二、四b、幅一・五三b、五・五トンの小型機関車。明治時代の機関車独特の長い煙突、美しい車体に動輪二輪、ボイラー上部に半丸型のサドルタンクがあるのが特徴で、緑色で前部中央には同校の校章と、「下松工高」のプレー一トかある。
石川島造船所では六台作られ、現在は一台しか残っていない貴重なもの。昭和九年まで徳山海軍練炭製造所で石炭運搬に使われていたが、同校が六十円で払い下げを受け、原動機の実習に使っていた。そのあとは三十年間も放置して雨ざらしのままだったが、創立六十周年を記念して昭和五十六年に教員と生徒が力を合わせて修理をし、同窓会の下松工業会の寄贈による車庫も完成して記念行事でグラウンドを走った。
昭和六十二年には鉄道マニアの人気が縁で岡山の下津井電鉄に貸し出され、瀬戸大橋開通記念イベントのメイン行事としてフラワーパーク内を走り、大きな話題を集めた。昨年は久しぶりに同校に帰って再び生徒たちが整備、創立七十周年の記念行事としてこれも生徒たちが敷いたレールの上を元気よく走り、生徒やOB、父母らを喜ばせた。 |
| 山本さんと下工同期生 |
国道188号から中国電力柳井発電所に向かう途中にある柳井卸団地で専務を務める山本さんは、弁慶号が入った翌年の昭和十年に同校に入学しており、柳井から下松まで汽車通学していたが、ちょうど弁慶号が実習に使われ始めたころだった。
山本さんは応用化学料だったため、授業などで弁慶号にさわる教会はなかったが「当時は運動場のネット裏に置いていて、小さい珍しい機関車だったので子供心に見ていて面白くて仕方がなかった。いっしょに運動会もしたし、いわばり“同期生”です」と振り返っている。
今回の復活は昨年弁慶号が七十周年で運行されたことを知って「同期生がまだ元気でやっていることを知って、大変な感激を受けた」山本さんがこの十一月八日、柳井卸団地が創立二十周年を記念したイベント「卸団地まつり」を開くことから「この目玉に」と考え、合わせて同団地の活性化も狙おうと企画した。
弁慶号はボイラーの手入れも行き届いていたが、常にボイラーをたいて調整する必要もあり、車検も切れる寸前だったため、昨年の運転を最後に学校で永久保存される予定だったが、山本さんの申し入れに学校側も快諾、卸センター側が車検の手続きをして 三月から運行することが決まった。 |
| 「愛好者保存は英国風」 |
弁慶号の運行は昨年は学校内部が対象だったため、一般への公開は県内では十一年前の同校六十周年のとき以来になり、人気を集めそうだが、山本さんは柳井卸団地での運行をきっかけに弁慶号の由来をくわしく説明しようと東京の交通博物館に行って資料を調べ、各地の資料も取り寄せて研究したほど。同博物館の肥沼恵一学芸課長によると、蒸気機関車の国産第一号は明治二十六年に作られ、民間企業による第一号は明治三十六年。弁慶号の製造はそのわずか四年後で、その後、石炭などの運搬用に小型機関車は多く作られたが、弁慶号はその中でもとくに古く、また石川島造船所はあまり蒸気機関車を作ってないため価値は大きいという。
また動ける状態のままで保存されている機関車の中では国産では国内最古のもの。肥沼課長は「機関車を動かして保存することは欧米ではよく見られるが、日本では安全基準も厳しいため大変なこと。ほかのところでは町づくりや観光のために保存されているケースが多く、下松工高のように生徒や先生たちの手で保存されてきたことはイギリスの愛好家たちの例に近く、国内でもまれでしょう」と賛ている。 |
| 300万円以上かけて整備 |
柳井卸団地ではこれを機会に団地裏の松林を公園に整備、早速レールを敷く工事を始めた。また歴史的な価値のあるものであることから機械警備を完備した車庫も製作する。外からも見られるよう防犯用のガラス張りにする予定で、整備費は三百万円以上になる見込み。
レールも下松工高で使ったものと、今回のために下津井電鉄から特別に取り寄せたものを合わせて計二百bにわたって敷く。客車も同校にあるものと同電鉄から取り寄せたもので二両編成で運行する。運転士は旧JR柳井機関区のOBが担当、乗車料百円で、予約で乗車を受け付けていく予定。
山本さんは「昨年元気で走ったことを知ったときはよう生きちょった、と感激した。同期生が元気で生きているのと同じ感じがする。たくさんの人に喜んでもらいたい」と張り切っている。 |
|